Tagebuch von Zukki

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【書評】菊池寛『極楽』

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先日、菊池寛の『極楽』が短いけど深いという話を小耳に挟み、早速kindleで読んでみたのでそのあらすじと思うところを述べてみようと思います。

 

あらすじ

信仰深い老女の「おかん」は旦那に先立たれるも、嫁いじめなどをすることなく快活に生き、大往生を遂げる。

死に際には子や孫が大勢集まって大いに嘆き悲しまれたが、本人は普段の行いの良さが報われてひとつも苦しむことなく息を引き取った。

 

その後「おかん」が意識を取り戻すと、薄明るい奇妙な空間にいることに気がつく。

行く手には周囲より幾分か明るい場所が見えており、何ヶ月も何年も「南無阿弥陀仏」と唱えながらそこへ向かって歩き続けた。

 

ようやく極楽浄土へたどり着いた「おかん」は死に別れた旦那と再会し、旦那が死んでからの日々について何日も話し続けた。

しかしそのうち話題は尽きるもので、それからは落ち着いて極楽の風物を楽しもうとする。

 

同じような日々が続くと、どんなに信仰が深くともさすがに飽きてくるもの。

旦那に「いつまで極楽にいるのだろうか。いつになったら転生できるのだろうか。」と尋ねるも、旦那は繰り返し「いつまでもだ。極楽よりほかに行くところがあろうか。」と答えるのみであった。

 

何年も何十年も平穏な生活が続くというのは、同時に果てなき退屈を味わうのと同義である。

ある日、「おかん」はふと思いついて旦那に「地獄はどんなところか知っているか?」と尋ねる。新鮮さを求めていた旦那はその疑問に食いつき、その話をするときに限っては楽しそうに話し合う。

 

結果として2人は見知らぬ、行きたくもない地獄について想像しながら退屈な日々をいつまでも過ごすのであった。

 

コメント

文体について

太宰治の作品なんかに比べると漢字が多く表現が堅く、かつ文末に「だ・である」を用いる常体であるため、「文章のままだと今どきの若者にはちょっと流行りそうにないかな…?」というのが正直な感想です。

しかし漫画化すれば「もしかすると死生観宗教観についてゆるーく学びたい人にヒットするんじゃないか…?」とも思われます。

 

内容について

國分功一郎という方の書いた『暇と退屈の倫理学』という本に「貴族のような満たされた人はスリルを追い求める」といった趣旨のことが書いてあったのを思い起こさせます。

なんとなく読んでいると報われない婆さんの物語のように思われますが…なるほど、寓話のような読み方もできそう。読めば読むほど様々な考え方が出てきそうだと感じました。

 

 

極楽
極楽
posted with amazlet at 18.11.10
(2012-09-13)
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